ゆらめく資産の記録

GAFA四騎士の本は退屈だったので読む必要はなかった

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

いちおうIT企業に居るのでテクノロジー寄りの観点からはGAFAそれぞれについて見聞きしているし、それぞれに対してそれなりの意見もある。とはいえそれだけだと株の行く末を占うには片手落ちかと思ったので、非テクノロジーな観点ではどういう見え方をしてるのか知るために読んでみた。2016年の本らしいけど、ちょうどそれくらいからAMZNの株価が加速してたはずなので、まあ関連はあるのかもしれない。

本としては様々な事実をよく集めてはいると思うけどただそれだけ。中身の半分近くはGAFAについての話ではない。インターネットが世界をどう変えたか/変えていくのかみたいなよくあるテーマでもない。かなり薄味というか、刺激になるようなものではなかった。唯一面白かったのは、ウォルマートがJet.comを買収したことを「中年男性が植毛技術を買ったようなもの」と評してたところ。

最初のAmazonの章では米国の小売事業の歴史を辿りつつ丁寧に書かれてたし、Appleについては社名から「コンピュータ」を外してラグジュアリーブランドになった経緯をちゃんと押さえてたりと、まあちゃんとしてる。でも残りの2つがスカスカ。Googleの章に至っては筆者がNYTに乗り込んでそこでやろうとしていたことがつらつらと書かれていて、それが章の半分近く(体感)を占める。このタイトルの本を読んでるんだから筆者のかんがえた最強のNYT再建計画(未実現)の武勇伝みたいなのを聞かされても困る。GAFA以後の世界で生き残るにはみたいな章に至っては、ある種の人たちが4月になると一斉に書き出す「新社会人へ」みたいなブログ記事のような内容で、さすがに昔はよかった的な内容ではなかったものの満足度は低い。

全体として掘り下げや切り取られている時間軸が物足りない部分はあるものの的はずれなことは書いていないと思う。Facebookはターゲティング広告が強力であるがゆえに広告事業でGoogleとシェアを二分しているとか、Amazonは安く大量に調達した資金を他社があんまり投資しないようなところ(配送とか)につぎ込んで強化に腐心しているとか、これを無視して語るのは難しいよなというところはちゃんとページを割いて解説している。Apple何それおいしいのみたいな人が読んだらちゃんと概要をつかめる本ではあると思うし、速習本みたいな感じで軽く読むにはいいと思う。あ、でも「AI」に対する理解はちょっと怪しいし、AWSへの言及は全体の中で1行くらいしかなかったので、最新技術動向みたいなものを期待してはいけない。個人的にはAWSを空気のように使って新しい会社や産業が出てくるとか、そういうGAFAを所与のものとして扱う世界はこの先どうなるかみたいな話があるのかと期待してたけど、最初から最後までGAFAが主語になった文章しかなかったのも物足りなさの原因かもしれない。